お屠蘇気分で(続きの2)
元旦の朝帰りで玄関を入ると母が飛び出してきて
「どうしたのよ、あなただけ帰ってこないから皆んなで心配してたのよ」
「はぐれちゃったからしばらく捜してたんだよ」
「まあ無事に帰ってきたからよかったわよ」
家に入るとはぐれた三人が雑煮を食べながらにやにや笑っています、
「どこではぐれたんだ」
「わかっていればはぐれやしないよ」
「前にもこんな事があったよな、今度は電車賃を持ってたのか?」
「変なこと覚えてるね、今年はちゃんと持ってたよ」
「前の分はお返ししたのか?」
「なんの話なの」と母が割り込みます
「ちゃんとお返ししたよ、3倍でね」
「へえ~豪勢じゃないか」
「こんなことはきっちりとしとかなくちゃ」
「今年は受験だからな」
そうなんです、今年は受験だからこんな事をしてはいられないと思いつつ、雑煮の後で襲ってきた眠気に耐えられず、正月明けからのラストスパートを誓ってはいたのです。
夕方まで眠り込んでいた四人は夕食時になるともそもそと起き出してきて卓袱台に向かいます
「あんたたちがちゃんとおせち料理を食べるのは今年初めてだね」
母の皮肉を聞き流しながら早速箸を伸ばすと卓袱台の上にはいつもながらのおせち料理が並んでいます。ちょっとだけ寂しいのは数の子の姿が見えないこと、戦時中でも食べられた数の子は敗戦後は姿を消しています。もちろん在るところには在るんでしょうが一般サラリーマンの家計では無理なのです。それでもその他の定番は何処で仕入れたのかしっかりと揃っています。
「お父さんのハゼの昆布巻きはおいしいねぇ」
「今年はいい具合に出来たな」父の顔がほころびます。我が家の定番のひとつにハゼを芯にした昆布巻きがあります、釣り好きの父が暮れになると現在のJR田町駅の傍から和船を借りてお台場まで艪を操ってハゼ釣りに行きます。釣ってきたハゼは串に刺し、逆さにした石油缶に吊るして七輪の炭で焼き上げます。そこまでが父の仕事、後は母が昆布巻きにするのですが、その甘辛の妙が絶品でしたね。それから我が家の定番はもうひとつありました。 …続く
「どうしたのよ、あなただけ帰ってこないから皆んなで心配してたのよ」
「はぐれちゃったからしばらく捜してたんだよ」
「まあ無事に帰ってきたからよかったわよ」
家に入るとはぐれた三人が雑煮を食べながらにやにや笑っています、
「どこではぐれたんだ」
「わかっていればはぐれやしないよ」
「前にもこんな事があったよな、今度は電車賃を持ってたのか?」
「変なこと覚えてるね、今年はちゃんと持ってたよ」
「前の分はお返ししたのか?」
「なんの話なの」と母が割り込みます
「ちゃんとお返ししたよ、3倍でね」
「へえ~豪勢じゃないか」
「こんなことはきっちりとしとかなくちゃ」
「今年は受験だからな」
そうなんです、今年は受験だからこんな事をしてはいられないと思いつつ、雑煮の後で襲ってきた眠気に耐えられず、正月明けからのラストスパートを誓ってはいたのです。
夕方まで眠り込んでいた四人は夕食時になるともそもそと起き出してきて卓袱台に向かいます
「あんたたちがちゃんとおせち料理を食べるのは今年初めてだね」
母の皮肉を聞き流しながら早速箸を伸ばすと卓袱台の上にはいつもながらのおせち料理が並んでいます。ちょっとだけ寂しいのは数の子の姿が見えないこと、戦時中でも食べられた数の子は敗戦後は姿を消しています。もちろん在るところには在るんでしょうが一般サラリーマンの家計では無理なのです。それでもその他の定番は何処で仕入れたのかしっかりと揃っています。
「お父さんのハゼの昆布巻きはおいしいねぇ」
「今年はいい具合に出来たな」父の顔がほころびます。我が家の定番のひとつにハゼを芯にした昆布巻きがあります、釣り好きの父が暮れになると現在のJR田町駅の傍から和船を借りてお台場まで艪を操ってハゼ釣りに行きます。釣ってきたハゼは串に刺し、逆さにした石油缶に吊るして七輪の炭で焼き上げます。そこまでが父の仕事、後は母が昆布巻きにするのですが、その甘辛の妙が絶品でしたね。それから我が家の定番はもうひとつありました。 …続く